偉大なるオペレーターが多い組織にはイノベーションが起こらない

 オペレーションがしっかりした組織は、安定・安心感があります。また顧客満足度も高いでしょう。しかし、それが社内ルールでガチガチに固まり、目的と手段の違いが判らなくなってしまうと、イノベーションが起きなくなる可能性があります。あなたの組織では、‟偉大なるオペレーター“が幅を利かせていませんか?

与えられた枠組みの中では優秀な“偉大なるオペレーター”たち

 ビジネスという厳しい荒波を乗り越えていくためには、自社の強みを活かして売上増、つまり需要創造を図っていかなければなりません。しかし、「うちの企業のブランドなら何とかなる」と安易に考えているビジネスマンも多く見受けられます。白紙の中で考え、実行に移す術を持たず、仕事をこなすのが「うまい」といわれる人たちが多いように思えてなりません。そういう人たちは、決められた枠組の中で精一杯の仕事はしますが、その枠組を超えた仕事は出来ないのです。「しない」ではなく、企業のオペレーションの枠組みで「出来ない」ようになってしまっているのです。

 日本ではバブル崩壊以降、既存の枠組みを超え、新たな需要を創造した事業が育たなくなってしまいました。ベンチャー企業に就職を希望する学生や、起業を目指す人たちは極めて少なく、安定した大企業への就職を希望する人が圧倒的に多いことからも、その様子がうかがえます。安定した生活が第一と考え、チャレンジしない社会になってきています。しかし、ウィズコロナの時代になっても安定だけを追い求めていると、一層経済社会(内需)は縮小してしまいます。1990年代以降、日本企業は、決められたことを遂行することは得意な「エリートオペレーター」を多く輩出し、結局、企業内官僚を育成してきたのかもしれません。

求められる「課題設定能力」

 こうした偉大なるオペレーターが力を持っている組織は、ほとんど間違いなく創造的な思考が抑制されています。ウィズコロナの大転換時代にあって、創造的な競争戦略を組み立てるには、「課題設定の能力」が必要です。

 これは、優秀なオペレーターになることの裏返しの能力でもあります。

課題を設定出来ない“優秀な”オペレーターである日本人ビジネスパーソンは、こうしたことに慣れていないからどうしたらいいのか解らないのです。目の前の仕事が忙しいからとやりすごしてしまっては、アフターコロナの時代に生き残ることは厳しいでしょう。

 例えば、過去に東海道新幹線や私鉄が街を作ったのも、ウォークマンが出てきたのも、全て課題の設定が優れていたのであり、大胆にそれを実行していった故に成し得たことだったのかもしれません。私鉄系の百貨店や住宅地は、その過程で輸送人員を増やす戦略で創造されたものであったであろうし、通勤客に頼らない平準化の戦略でもあったのでしょう。東海道新幹線は、言うに及ばず、経済街道を発展させたプロジェクトでした。こうした大胆な課題設定は、オペレーターに徹していては出来ないものです。

 自分が知っているものと知らないものをきっちりと認識し、知らないものについては他者の援助や協働などを働きかけることが重要になってきます。「自分は全て知っている」と考える人たちほど、恐ろしいものはありません。

 残念ながら、過去のビジネスモデルを踏襲するだけで生き残れる事業は益々少なくなってきています。これがゼロにならないところが、実はやっかいな部分なのですが、過去に成功した延長上に多くの人たちが群がるのですが、そこは非常に小さくなってしまった世界です。夏の夜の電灯に群がる虫と同様で、踊った後には何も残っていません。

 この厳しい状況を抜けるには、自らが既存の枠を超えた課題を設定して新たな道を創造し、動き回らなければなりません。眼の前の書類を埋めることに専念している人たちが多い組織、職場の電気を消すことが経費削減だと思っていて競争原理がわからない組織は、残念ながら生き残っていくことは厳しいでしょう。必死に課題を設定し、戦略を立て、実行することを愚直に繰り返す。次の時代は決して楽観できるものではありませんが、考えることを放棄しなければ、何らかの夢は切り拓けるはずです。

  
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