まじめで優秀な社員が多い職場ほど、“偉大なるオペレーター”が幅をきかせていることがあります。これまで効率性を追求してきた仕事のやり方を守ることに必死になっていると、創造的な考え方や活力が駆逐され、次第に組織が停滞していきます。どんな状態になっていたら危険信号なのでしょうか?
次は、わたしたちが遭遇したある組織のエピソードです。あなたの組織でも似たようなことは起きていないか確認してみてください。
1. エピソード コストカット以外に打つ手がない
直近の十数年間で年々売上を伸長し、業界トップの地位を守っている製造会社X社のA事業部は、1年前から増収減益という厳しい決算となりました。減益の要因は原料価格の上昇および人件費の高止まりです。
経営の教科書からすると、直ちに経費を中心としたコスト削減施策を実施することが定石といえるでしょう。
調達先の変更、発注方法の見直しによる交渉力のアップ、臨時職員の雇用止め、管理職を中心とする給与削減等々、次々とコストカット案が出てくるのではないでしょうか。
しかし、2020年に起きたコロナショックによる急激な業績悪化に対応するために緊急施策を矢継ぎ早に実施し、急場を凌いできているので、経費を中心とした内部的なコストカットではもはや追いつかず、残念ながらこれまでのやり方では通用しなくなっています。
原料調達先の企業数もすでに絞られているために、調達コストを下げようとしても、もはやこれもできない状況です。こうなるとA事業部のミドルは、「手の打ち様がない」と嘆くばかり。しかし、幹部は、「うちは業界ナンバーワンシェアと売上を誇っているので、これを持続的に守り続ける」と根拠のない目標を掲げて、盲目的に走り続けることに・・・。
2. 停滞した組織に起きている4つのこと
実際にこのような状況に陥っている企業は少なくないのではないでしょうか。いざ当事者になると、組織の「現実」をしっかりと受け止めることは難しいものです。あなたの組織が停滞していないかどうかを、次のような4つの事象が起きていないかで確認してみましょう。
☑目の前の仕事で精一杯になっている
☑過度に調和を大切にしている
☑このままでも大丈夫だろうと危機感が薄い
☑偉大なるオペレーターが幅を利かせている
もし、このような現象が起きている組織にいるとしたら、アフターコロナの大変革時代を乗り越え、生き残っていくためには、組織を活性化していく方法を考えなければならないでしょう。
目の前の仕事で精一杯になっていないでしょうか
戦略不在で、かつ硬直してしまっている組織になっていることにうすうす気付いている人たちも多いかもしれません。例えば、グローバル展開の戦略をどのように進めたらよいのかという問題に直面したとします。このような問題について議論できない組織は、具体的な戦略が誰にも見えてきません。さらに、効率化を求めて分業を推進した結果、隣の仕事もわからなくなるくらいに細分化されてしまい、ますます全体像が見えなくなってしまっています。ですから、目の前に見えるものだけで仕事をしてしまうのです。また、昨今コンプライアンスや環境への対応等で新しい管理的な仕事が強化されたため、内部的な仕事が大量に増えてしまい、机の上だけで仕事をする社内官僚が増大するという皮肉な結果を生んでいます。社内官僚になってしまった多くのミドルも、決して好んでこの立場を受け入れているのではなく、会社のシステムの一つとならざるを得ない状況なのです。毎朝デスクに座ってパソコンにスイッチを入れれば、自分だけのデスクワールドが始まってしまいます。日々の忙しさに追われ、本当に考えなくてはならないことや、やらなくてはならないことを後回しにしていませんか?このままではいけないとどこかで感じていたり、仕事のやり方や見方を変えて組織改革をしなくてはいけないと思う人が一人いても、組織はそんなに簡単に変えられないのが現実です。
過去の成功にしがみついていないでしょうか
コストカットや働き方改革・DXで業務カイゼンすることなどはわかりやすいので、どの企業でも取り組もうとします。しかし、本当はその先のシナリオを描かなければならないのに、その場しのぎの対応に終始して、また自らを忙しくしています。それで凌ぐことができない経営課題にはお手上げになってしまうのです。
特に、過去に成功した組織では、戦略の方向転換が困難なケースも多く見られます。それは過去の成功体験に縛られてしまうからです。また、トップの任期は2年程度が平均であり、無謀なことは行わないのが常です。実際に年商3,500億円の企業のある社長が、「自分の任期は定められていないが、通常は2年である。2年で大改革はできない。着手して結果を出そうとする時には自分は退任となり、後任に迷惑をかけることになる。だから、大過なくということが結果として起こってしまう」と話していたのが印象的です。こういった話は未だ多くの組織で見られる現象なのです。トップもサラリーマン経営者という現実から逃れられない。一方、ミドルはミドルで、本で得た知識から「何もしないトップは無能だ」と言う。これが日本の会社の虚飾無い姿なのです。もちろんそうではない組織も沢山存在しますが、伝統的で身動きが出来ない組織の多くは、現実を直視できずに何もできないまま、業績がどんどん悪化していくのです。
組織変革に必要なのは、悪循環を生み出している「中核の課題」を見つけること
このような企業においては、現場を知るミドルが本当に危機感を持って声を上げていかなければなりません。しかし、気合と根性だけで立ち上がっても意味を成しません。しっかりとした論理性のある競争戦略を描く必要があるのです。まず現実を直視して、わかり易い論理にすることです。現在起きている泥沼の悪循環を好循環のビジネスモデルに変えていくことを徹底的に考える必要があります。組織の「中核の課題」を見つけられるかが勝負となります。

FeLIX Partners 研修資料より