心理的安全性が組織・チームの未来をつくる

企業成長のマンネリ化を防ぐためにも、社員一人ひとりが上位役職者にも自分の率直な考えを述べたり、質問ができる環境をつくり上げることが重要です。しかし、上位役職者の発言のほうが優先されるという企業は少なくないでしょう。経験・実績ともに持ち合わせた上位役職者の発言は当然重要ではありますが、様々な意見を取り込み、組織を活性化させなければ、あなたが企業成長のマンネリ化を招く原因になってしまいかねません。チームの一人ひとりが率直な意見を述べ、企業の業績向上や社員の質が上がるということを軸に、心理的安全を築くために重要なノウハウ・心構えについて考えていきたいと思います。

こちらの記事は以下に当てはまる方におすすめです。

✅ 若手から意見が全く出ないと不満に思っている方
✅ 企業経営がマンネリしていると感じている方
✅ 部下とのコミュニケーションで悩んでいる方
✅ 社員の定着率を上げたい経営者

企業の成長には、社員一人ひとりも成長し、革新的なアイディアを生み出す行動が必要不可欠です。しかし、自分の率直な意見を述べずに、「どうせ自分の意見は通らない」と諦めてしまう方が多いのが実状です。また、そのような部下の姿を見てきた方も多いのではないでしょうか。

このような状況を打破するためには、信頼関係といっても過言ではない心理的安全性をつくり上げることが大切です。

社員が考えがちな否定されることへのリスク

否定的

会議中、上位役職者が述べた意見に対し、ある若手社員が「その意見もよいと思いますが、こちらの方法のほうが効率よく事業が回りそうです」と別意見を提案したとします。会議はどのような雰囲気になるでしょうか。

多くは気まずい雰囲気が流れ、周囲の社員は「なぜ役職者の意見を否定するようなことを言ったのか」と思うでしょう。若手社員に、新たな意見を提案された上位役職者もいい気はしないかもしれません。

しかし、冷静に考えてみると、役職関係なく、新たな意見を提案することは会社にとって必要不可欠なことであり、素晴らしい行動の一つともいえます。それなのに、なぜ、こうした率直な意見を表明するビジネスマンが少ないのかというと、否定は対人におけるリスクだと考える方が多いからです。

ハーバード大学のエドモンドソン教授 は、対人関係にリスクを及ぼすと考えられる意識には「無知」「無能」「邪魔」「否定的」という4つのカテゴリーがあると述べています(『心理的安全性のつくりかた』石井遼介著 日本能率協会マネジメントセンター)P.25~26より)。

それぞれ、

  • 「無知」だと思われたくないので、必要なことでも質問をせず、相談をしない
  • 「無能」だと思われたくないので、ミスを隠したり、自分の考えを言わない
  • 「邪魔」だと思われたくないので、必要でも助けを求めず、不十分な仕事でも妥協する
  • 「否定的」だと思われたくないので、是々非々で議論をせず、率直に意見を言わない。

などと解説しています。確かにチーム内での対人リスクになりそうです。

対人リスクを冒してまで自分の意見を述べようとする社員が少ないということは、ビジネスシーンにおいて行動力を抑えている社員が多いことを示しており、組織の活性化に大きく影響をもたらします。

その状況を石井遼介氏は同書でさらにこう述べています。

このように行動をしなくなる心理的「非」安全な職場は、「チームの学習」という観点で、大きく次の二つの問題があります。1. 挑戦することがリスクとなるため、実践し、模索し、行動することから学ぶことをができなくなる 2. 個々のメンバーが気づいていたり知っていたりすることを、うまくチームの財産へと変えることができない(同書、P26〜27)  

知らず知らずのうちに、経験・知識を有した上位役職者のみが発言できる環境をつくってしまっている状況は、心理的安全性を低下させるだけではありません。新しいことに挑戦できず、やりがいを見い出せなくなってしまいうことも多々あります。それに伴い企業の生産率も低下します。

企業経営がマンネリ化し、心理的安全性が低下していると自覚しているリーダーは、早急に改善方法を検討する必要があるでしょう。

心理的安全性の概念

 チームワーク

そもそも心理的安全性が高い企業とは、どのような職場を指すのでしょうか。

それは、「健全に意見を戦わせ、生産的でよい仕事をする」ことに力を注げる職場(同書、P28)であると述べています。

また、「心理的安全性のよくある誤解」として、次のようにも解説しています。

「心理的安全性」という言葉は、字面や表面だけを捉えると誤解を生みがちです。心理的安全なチームというのは、外交的であることでも、アットホームな職場のことでも、単に結束したチームのことでも、すぐに妥協する「ヌルい」職場のことでもありません。(同書、P33)

つまり、自分の率直な意見を述べることができたとしても、そこに挑戦が伴わない企業であれば、心理的安全性が高いとはいえないのです。

心理的安全性とは、発言を自由にできた上で、社員が行動力を持ち一丸となって努力や挑戦を続けられる状況を指すということを理解しておきましょう。

心理的安全性はパフォーマンスを向上させる

心理的安全性は企業のパフォーマンスを向上させるというメリットがあります。

業績を伸ばすために、ノルマや罰などを設けている企業もありますが、あまりにもきつすぎる目標を設定してしまうと、社員のやりがいまで奪ってしまい、結果として企業成長が止まってしまいます。

しかし、心理的安全性を高めると、自発的に行動する社員や、経験から得る学習を通じて企業貢献する社員が増加します。それにより、企業全体のパフォーマンス性が向上し、結果として業績向上につながります。

メリットはそれだけではなく、失敗を恐れる社員が減少することにより、常に変化し、挑戦し続ける企業へと変貌を遂げられるのです。

心理的安全性のある組織を生み出すリーダーの姿とは

ミーティング

「心理的安全性を高め、社員が発言しやすい雰囲気づくりをしようと思っても、何からはじめればいいのかわからない」という方もいるでしょう。

心理的安全性のあるリーダーになるためにまず考えて欲しいことは2つあります。

  1. 「自分自身を「問題」の中に入れる」
  2. 「自分自身の「行動」を振り返る」(同書P.67~68より)

例を挙げると、1人の部下が自分の意見を持たず、言われたとおりにしか動かないとします。このとき、多くの管理職が「言われたことしかしないな」と感じるのではないでしょうか。

しかし、このような状況になったときは、実は、その問題の一部に自分がいることに気づき、自分自身は若手が求める行動や発言ができているのか、自分の行動を振り返ることが必要です。

つまり、部下が言われたことしかしない状況の裏には「また上司に注意されるのではないか」「また自分の意見を否定されるのではないか」という不安が隠れている可能性があるのです。ですから、あなた自身の行動に問題がないかチェックする必要があるのです。

では、活発な発言ができるチームを作るためには何が必要なのでしょうか。それには、「自分自身の「行動」を振り返る」必要があります。

部下の言動をしっかり見てあげているでしょうか?彼らが話している内容の背景を捉えているでしょうか?会議での話の聞き方はどうでしょうか?彼らが本当は話したいのに話せていないことはないでしょうか?など、自分自身の行動を一度点検してみてください。

「リーダーは常に部下を肯定してばかりいては務まらない」という方もいるでしょう。しかし、その根底には「信頼関係」の有無が影響しています。信頼関係が築けていない中での否定は、部下に対し強くネガティブな印象を与えてしまいかねません。それが、部下のためであると思っていたとしてもです。まずは、心理的安全性を高めることに自分自身が率先して取り組み、信頼関係の構築からはじめてみましょう。

心理的安全性を促すリーダーの3つの行動

心理的安全性のある組織をつくるにはまず、部下との信頼関係を構築する必要があることは前述しました。これは日々の業務を自分ファーストではなく、誠実にこなしていくことから生まれます。そのうえで、話しやすい雰囲気をつくり、目標に向かって困難にも挑戦できる組織を創ることが重要です。

そんな組織を創るために、リーダーには具体的には次の3つの行動が必要です。

  1. 話しやすい雰囲気をつくる
  2. 助け合う気持ちを大切にするチームを作ることを表明する
  3. 挑戦へむけて鼓舞する

部下が担当している業務について相談してきたときの自分の姿を振り返ってみてください。部下の目を見て、きちんと相づちを打っていますか?報告してきたことを褒めてあげていますか?業務に追われていればいるほど、部下の目を見ることなく、そっけない返事をしてしまいがちです。

しかし、それでは、話しやすさは感じてもらえません。「○○さんに相談してよかった!」と部下から感じてもらうためにも、目を見て、話に耳を傾けてみましょう。

また、助け合いができている組織や個性を発揮できる組織は、社員の誰しもが新しいことに挑戦しやすいため、斬新なアイディアが生まれる機会も創出されます。自分はそういうチームを作りたいということを表明しましょう。

互いに助け合いながら、挑戦できる環境をつくり出し、新奇を認めるリーダーでいることを心がけることで、部下との信頼関係を築けるだけではなく、企業活性化を促すこともできるようになるでしょう。

まとめ 

上向の矢印

これまでの社会では、言われたことをひたすら努力することが美徳とされていました。強いリーダーシップで軍隊的にまとめ上げ、目標に向かってひた走ることは、高度成長時代にはよかったかもしれません。しかし、取り巻く環境は複雑になり、多様な価値観を認める社会になってきました。上位役職者が定めた目標に一丸となって突き進むだけでは、企業の成長どころか、社員の成長も期待できない時代となっています。

「何年経っても部下が成長しないな」「企業がマンネリ化している」と感じている方だけではなく、「つくりたい組織像がある」という方は、部下との信頼が築けているか、そして誰しもが自由に発言や行動ができる雰囲気づくりができているかを振り返ってみましょう。

まだ改善の余地があると感じた場合は、リーダーとしての心理的柔軟性を意識し、行動を変えてみてください。その姿を見た他の社員は、信頼を覚え、さらに企業全体の心理的安全性が高まるでしょう。

  
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