恐怖心を追い払う

 改革や再生の現場で起こる混乱に遭遇すると、思わず立ちすくんでしまうこともしばしばあるでしょう。そこから先に進めないのであれば、それは、自分の中に‟恐怖”という大きな「壁」が存在しているからです。もう半歩でも先へ進むためには、その「壁」を壊さなければなりません。今回は、そんな半歩を踏み出すために必要な恐怖心への対策法を述べていきます。

改革は修正の連続であることを認識する

 ファ-ストリテイリングの柳井社長は、知識と実践の関係について次のように述べています。多くの人は「知識が先行してしまい、その現状分析だけで精一杯となり、実践まで辿りつかないことが多い。「たぶんこうじゃないかと仮説を立てて、実際にやる。しかし、そのとおりにいかないことが多い。だから、計画や仮説のどこがどう間違っていたかを、早く見つけて修正することが大事」(柳井正「一勝九敗」新潮社,2003)同上)。

 柳井社長のいう「修正」とは、間違ったことを素直に認め、そこから振り返る“勇気”が必要だという意味ではないでしょうか。

 学校で教わった正解、不正解を求める教育をそのまま社会に持ち込み、正解以外はフリーズしてしまう行動様式を変えなければ、何事も実践できるようにはなりません。新しいことにチャレンジすることでイノベーションが生まれるのですから、行動様式も同様にチャレンジしなければ、新しいものへの転換は不可能です。

 経営の意思決定は、およそ7割が失敗の世界であるのが現実です。「失敗を生かすも殺すも、経営次第」(同上)です。しかし、企業社会では、失敗をすると昇進や昇給に影響するので、失敗はできないと考える人も多いと思います。例えば、「今後のグローバル化の事業展開を見据え、数十億円の投資を行って食品加工工場を建設することを企画したが、商品の受注獲得が思ったようにできずにムダな投資で終ってしまった。」とい人が、さらに何らかのミスをしていまうと、意図しない方向に社内ポジションがずれていってしまうことは十分に起こり得ます。このような事例を目の当たりにすると、「目の前の仕事を失敗せずにやっていった方が安全で、それなりに役員の近くまで出世したところで頭角を示すように、今の自分に折り合いをつければいい」とい考えてしまうこともあるでしょう。

知識と行動の間にある「壁」を乗り越える

 これまでの知識を実践に変えなければならない時に、最後に立ちはだかる壁は「恐怖心」だと私は考えています。誰もが5メートルの大波の海でヨットレースをしなければならなくなったときに、自然の脅威に対して恐怖心を覚えるでしょう。ビジネスの世界における恐怖も、自然に立ち向かうときの恐怖と同じものです。「○社の社長だから、怖いものはないのだ」ということなどあるはずがなく、トップには経営に対する責任が常にのし掛かり、失敗に対する恐怖心は人一倍大きいはずです。また、前述のように失敗によって社内のポジションに影響があることを恐れ、「私たちは所詮サラリーマンだから、上に目を付けられないようにするのが処世術だ。」という考え方も、やはり恐怖心によるものです。この「恐怖心」という壁は誰の心にも潜んでいるものですが、それを認識しながら乗り越えていかなければ、これほど変化の激しい社会では生き残ってはいけません。恐怖を追い払いながら組織運営をしなければならないのです。

失敗の仮説を立てて「見える化」する

 通常の仕事でも改革の場においても、私たちは安全を第一に考えてリスクを取ろうとはしない傾向がありますから、不確実な世界は闇の世界のように思えてしまいます。だから、誰もそこへ行こうとしないのです。したがって、いくら「失敗を恐れるな」と言っても、余程の覚悟がない限り、飛び込むことはできません。改革や再生は先が見えない不確実な活動の一つです。できるだけ不確実性をなくし、皆が不安がらないようにするためには、再生プロジェクトでは、どこで失敗する可能性があるかといったことを仮設立てし、明確にすることが有効です。以下の5つの項目を参考にしてみてください。

 これは「起こり得るすべてのリスクを考えろ」というものではありません。恐怖の「視える化」を行うのがその目的です。ヒトは着地点や到着点がイメージできると不思議と安心するものです。マラソンでゴールが近くなってきたときの元気、休日前の元気など、ゴールが見えると元気づくものです。つまり、リスクを洗い出すのではなく、最悪の着地点をイメージすることが大事なのです。そうすることによって、恐怖心を振り払うことができます。リスクがあることを知ったら、実践行動ができなくなるという考えもあるかもしれませんが、その恐怖を想像しただけで怖気づくのであれば、改革を実践するにはほど遠いでしょう。恐怖心が払拭できなければ、あなたは改革チームのメンバーには適さないのです。

 恐怖心は存在する。しかし、それを認め、認めたら追い払う方法を考えるのです。それも早い段階に、「すぐに、そして必ずやりとげる」ようにしなければなりません。小学校のプールで始めて飛び込み台に立つ恐怖は、水の中に飛び込んだ瞬間に取り払われているように、覚悟を決めて踏み出す勇気を持つことが大切です。

まとめ

 今回は、改革を進めていく中で生まれる恐怖心について述べました。

 改革は、前例がないことがほとんどで、失敗への不安が付き物です。今改革を進めようとしているあなただけが感じるものではなく、全員が感じるものなのです。勇気を持って恐怖心を追い払い、行動していくしかありません。

 

  
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